薬剤師の業務上過失致死傷罪
仙台市若林区在住の薬剤師Aさんは、業務上過失致傷罪の疑いで宮城県仙台東警察署により任意出頭を要請され、取調べを受ける予定です。
同署によると、薬剤師としてAさんが勤務中、患者Vさんに調剤した際に薬の取り違えを起こして、その結果Vさんに健康被害が起こったという疑いがかけられているそうです。
同署は、調剤したAさんの不注意による調剤過誤が原因とみて捜査を進めています。
宮城県仙台東警察署の取調べに不安を感じているAさんは、仙台市内の刑事事件専門法律事務所の弁護士に無料法律相談をしました。
(フィクションです。)
~調剤過誤~
日本薬剤師会では、「調剤事故」、「調剤過誤」について、以下のように定義しています。
調剤事故: 医療事故の一類型。調剤に関連して、患者に健康被害が発生したもの。
薬剤師の過失の有無を問わない。
調剤過誤: 調剤事故の中で、薬剤師の過失により起こったもの。
調剤の間違いだけでなく、薬剤師の説明不足や指導内容の間違い等により健康被害が発生した場合も、「薬剤師に過失がある」と考えられ、「調剤過誤」となる。
もし、薬剤師が調剤過誤を起こしてしまった場合、刑法211条の業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
~業務上過失致死傷罪~
業務上過失致死傷罪は、刑法211条前段に定められている犯罪です。
「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と規定されています。
業務上過失致死傷罪の成立要件は、「一定の業務を反復継続して行う地位にある者」が、「業務上課せられる必要な注意を怠り、人を死傷させた場合」とされています。
ここでいう「業務」とは、判例によれば、「社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う行為であって、生命身体に危険を生じうるもの」をいいます。
他人の生命や身体に危険が生じるような業務を実施している際に,過失行為(注意義務を怠って)によって人を死傷させた場合,その行為者自身や現場監督者などは業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
業務上過失致死傷罪で起訴されて有罪が確定すれば「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」が科せられます。
薬剤師の調剤過誤により業務上過失致死傷罪が問われた裁判例としては、処方箋の文字を読み間違えたケースや、投与量や効果の似ている他の薬剤と勘違いをして調剤したケースがあります。
前者に関しては。業務上過失致傷罪の成立が認められて、禁錮1年執行猶予3年とされている裁判例(福岡地判昭和52年3月31日)があります。
後者に関しては、業務上過失致死罪の成立が認められて罰金25万円が科されている裁判例(沖縄簡略式平成7年1月5日)があります。
~取調べ前に弁護士に相談を!~
警察に業務上過失致死傷罪で捜査されている場合、Aさんのように任意出頭を要請されて、取調べを受けることがあります。
取調べでは、調剤過誤が発生した経過等について聴取すると考えられます。
ところで、業務上過失致死傷罪は、罪名からもわかるように,過失犯です。
この場合の過失とは,業務上必要な注意義務を怠ることです。
過失の有無は、状況証拠と共に,取調べでの供述内容で過失が立証されることとなります。
事案によっては過失がないとの主張をすることにより,罪の成立を否定することが考えられます。
・充分な注意を尽くしていたとしても,傷害・死亡結果の発生は避けられるものではなかったという主張
・事故の発生は被害者側の過失によるものであって,本人には過失はなかったなどの主張
をする必要がある場合もあります。
取調べでは,自分の言いたいことがしっかり主張できない,主張が正確に取調官に伝わらない,取調官が言い分を受け入れてくれない,言い分が取調官によって曲解されるなどの理由から、思いがけず自分に不利な供述や虚偽の自白をさせられて、取り返しのつかないことになることもあります。
そのような事態にならないよう、取調べをうけることになった場合は,事前に刑事事件に強い弁護士に相談して、取調べ対応についてアドバイスを受けておくことをお勧めします。
また、業務上過失致死傷罪では、関係者からの取調べの他、現場や本社等に対し家宅捜索をする傾向があります。
家宅捜索などの刑事事件の手続や対応方法、刑事処分の見通しなど、刑事事件に巻き込まれた方にとって不安や心配事が尽きないでしょう。
そのような場合こそ、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談下さい。
刑事事件に関する不安や心配事,疑問点など何でもご相談いただけます。
(宮城県仙台東警察署への初回接見費用:36,900円)