1.執行猶予判決とは
執行猶予判決とは「被告人を懲役〇年に処する この裁判確定の日から◇年間、その刑の執行を猶予する」という形で出されます。
この判決の意味は、判決確定から◇年間再び罪を犯すことがなければ、刑務所に行く必要はない。しかし、◇年の間に、もう一度罪を犯した場合には、その新たに犯した罪の刑期にプラスして、〇年間刑務所に行かなければならないということを指します。
執行猶予判決の反対が実刑判決です。実刑判決の場合には、いきなり刑務所に行くことになります。
2.執行猶予判決の要件
執行猶予判決を出すためには、一定の要件があります。
①3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の刑を言い渡すとき
1の例で行くと、〇が3以下でなければなりません。
なお、法律上は罰金刑でも執行猶予にすることができますが、実際上は懲役・禁錮刑の場合にのみつけられます。
②以下の要件のいずれかを満たすとき
A 前に禁錮以上の刑に処せられたことがないとき
B 前に禁錮以上の刑に処せられていても、その執行を終えたか執行の免除を得た日から5年以上を経過したとき
③執行猶予にすべき情状があるとき
執行猶予判決にするかどうかは、事案の軽重や、被害者の処罰感情、示談の有無、被告人の反省の程度など、様々な要素を考慮して決定されます。
そのため、被告人の側としては、可能な限り有利な情状を裁判官に訴えていく必要があります。
3.再度の執行猶予
基本的には、執行猶予中に再び罪を犯すと、今度は刑務所に行かなければなりません。
しかし、例外的にもう一回だけ執行猶予にすることができます。
それは、以下のような場合です。
①前回の執行猶予が刑の全部の執行猶予であること
刑の一部の執行猶予ではいけません。
②今回の罪で1年以下の懲役に処する場合
通常の執行猶予の場合には、3年以下の懲役であれば執行猶予にすることができましたが、再び執行猶予にするためには1年以下の懲役でなければなりません。
③情状に特に酌量すべき点があるとき
情状については、執行猶予のときに述べたのと同じような事情が考慮されます。
ただ、ハードルが高くなっているということになります。
4.刑の一部の執行猶予
これまでは、刑の執行猶予をする際には、全ての刑を猶予にするしかありませんでした。
しかし、刑法が改正され、刑の一部を実刑にし、残りを執行猶予にするという判決が出せるようになりました。
この判決では「懲役3年、そのうち2年は刑務所に行き、1年については3年間猶予する」といった内容になります。
このような判決が出せるようになった意味は、刑の全部を執行猶予にするほどよい情状があるわけではないが、かといって、全部服役させるほどではなく、早期に社会復帰させる必要がある。
かといって、言い渡す刑を短くすると矯正効果に疑問がある。
そのような場合に対応することにあります。
刑の一部執行猶予については、全ての犯罪に適用がありますが、薬物犯の場合には特則があります。
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