殺人しても逮捕されない?
殺人罪に問われているのに逮捕されていないという事件がありました。
上野でホームレス女性を殺害容疑 60代の男を書類送検
Yahoo!ニュース(共同通信)
なぜ犯罪をしても逮捕されないケースがあるのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~逮捕の条件は?~
このニュースの事件は、60代の男性が、上野公園で生活していたホームレスの70代女性の頭部に暴行を加えて死亡させ、殺人の容疑で捜査を受けているというものです。
今回の事件で男は逮捕されず、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けたり、裁判所いで向いて裁判を受ける在宅事件として捜査が進められています。
殺人罪という重い犯罪であれば逮捕されて捜査を受けるのが普通なので、珍しいパターンと言えます。
そもそも、犯罪をしたことが確実であっても、必ず逮捕されるわけではありません。
適法に逮捕するための条件は刑事訴訟法で、
①犯罪をした可能性が高いこと
②逃亡や証拠隠滅のおそれがあること
とされています(現行犯逮捕の場合は多少異なります)。
今回の事件で警察は、「逃走の恐れが低いなどの理由から身柄の拘束は必要ないと判断した」と説明しています。
つまり、②の条件を満たさない可能性があることから、逮捕せずに捜査を進めているということです。
~逃亡や証拠隠滅のおそれの判断方法は?~
そうなると、逃亡や証拠隠滅のおそれの有無が重要となりますが、これは諸事情を総合的に考慮して判断することになります。
たとえば一般的に、刑罰が重い犯罪ほど、刑罰から逃れるために逃亡や証拠隠滅をするおそれが高いと考えられています。
共犯者がいる事件では、相談して証拠隠滅するおそれがあると考えられる傾向があります。
被害者と家が近い、職場が同じなどの理由により被害者と会う可能性のある場合には、被害者を脅して、被害者の供述という証拠の内容を変えさせてしまう(証拠隠滅してしまう)おそれがあると判断される事情の1つとなります。
一方、犯行内容が単純で、すでに警察が全て把握している事件では、これ以上証拠隠滅しようがないと判断されることもあります。
また、家族がいる場合には、家族を捨ててまで逃亡はしないだろうと判断されることがあります。
高齢で体力がない人には逃亡生活は厳しいので、逃亡のおそれは低いと判断される場合もあります。
他にも、すでに被害者に謝罪・賠償して示談を結んでいれば、逃亡や証拠隠滅のおそれは低いと判断される傾向にあります。
今回のニュースの事件で具体的にどういう理由から逃亡のおそれが低いといった判断をしたのかはわかりませんが、上記のような事情をふまえた上で結論を出したものと考えられます。
~逮捕を防ぐ・釈放を目指す~
逆に言うと、何らかの犯罪をしてしまったとしても、逃亡や証拠隠滅が低いと思わせるような事情をしっかり示すことができれば、逮捕の可能性を下げることができます。
また、仮に逮捕されてしまった場合、逮捕の翌日や翌々日頃に、身体拘束を続けた方が良いか(勾留するか)の判断が、検察官や裁判官によってなされます。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあることは、勾留の条件にもなっているので、ここで逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断してもらえれば、勾留されずに釈放されることになります。
殺人事件ではなかなか厳しいでしょうが、一般の方が思っている以上に逮捕されなかったり早期に釈放される事件は多いです。
~弁護士にご相談ください~
とはいえ、もしあなた自身やご家族が何らかの犯罪をしてしまった場合、慣れない取調べの場面で、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを適切に示していくことは簡単ではないと思います。
また、被害者との示談も何と言ってお願いすれば良いのか、示談金はいくらにしたらよいのか、示談書の文言はどうしたらよいのかなど、わからないことが多いと思います。
弁護士は逮捕を防いだり早期に釈放されることを目指して、最大限サポート致しますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。