1 不正アクセス禁止法
(1)不正アクセスとは
不正アクセス禁止法では、どのような場合が不正アクセスに該当するかを定めています。
条文はかなり難解な用語で定義されていますが、簡単にいうと、以下の2つの行為に分類されます。
- 他人のパスワードなどを悪用して勝手にログインする行為
- コンピュータプログラムの不備をついて、勝手にログインする行為
(2)不正アクセス禁止法の刑罰
代表的なものとして、次のような刑罰があります。
- 不正アクセス行為の禁止
不正アクセス行為を行うと、それ自体で3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。 - パスワード等の不正取得の禁止
不正アクセス行為を行うことを目的として、他人のパスワード等を取得した場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
(3)不正アクセス禁止法のQ&A
- パスワードを友達に教えてもらってアクセスしました。これも不正アクセスになるのですか?
なりません。
法律は、不正アクセスの定義から、本人の承諾がある場合を除いています。
- 自分のパソコンが、知らぬ間に不正アクセス行為を行っていました。処罰されますか?
処罰されません。
ウィルスやプログラムを用いて不正アクセスを行う場合、第三者のパソコンを経由してサーバーに攻撃を仕掛ける場合があります。この場合は、表面上は第三者のパソコンから攻撃が仕掛けられているように見えます。
第三者としては、何かをしたという意識がないのですから、当然処罰されることはありません。しかし、表面上は攻撃を仕掛けているように見えるので、捜査をされることはあります。また、場合によっては誤認逮捕のおそれすらあります。このような可能性が実際に怒ってしまったのが、PC遠隔操作事件です。
2 著作権法
(1)違法ダウンロードの禁止
著作権法が改正され、映画やアニメ、ゲームなどの違法ダウンロードが刑罰付きで禁止されるようになりました。
違法アップロードは、著作権を侵害するものとして、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科という重い刑罰が予定されています。これに対し、違法ダウンロードは、あくまで私的複製ということで、民事上は問題あるものでしたが、刑事上は処罰されていませんでした。しかし、法改正により、処罰されることとなりました。
違法ダウンロードの刑罰は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科ということになっており、アップロードに比べて刑罰が軽くなっています。
(2)Q&A
ストリーミングでも違法ダウンロードになるの?
多数派は、ならないと考えています。
著作権法47条の8により、キャッシュに保存する行為は複製と考えていないことを理由としています。
しかし、著作権法47条の8には、違法に著作物を利用する行為を除外する規定もありますので、絶対の解釈とも言えません。
裁判所が最終的にどのような判断をするかは、現在のところ不明と言えるでしょう。
3 書き込みを巡る犯罪
ネットの書き込みが、何らかの犯罪に該当する場合があります。
- 掲示板に、「○○を殺す」と書き込んだ場合には、脅迫罪が成立する場合があります。
- 「◇◇は極悪非道の犯罪者である」と書き込んだ場合は、名誉毀損や侮辱が成立する可能性があります。
- 「☆☆に爆弾を仕掛けた」と書き込んだ場合には、脅迫罪が成立する場合もありますし、威力業務妨害罪が成立する場合もあります。
- 「△△の商品は産地偽装の不良商品」と書き込んだ場合には、信用毀損罪が成立する場合があります。
このように、ネットの書き込みとはいえ、犯罪が成立する場合があります。多くの主張として、ネットの書き込みなんて誰も信じないから無罪だというものがあります。しかし、このような主張は認められません。そのことは、このような書き込みがあれば会社や個人がどのような行動をとるか、報道されているので明らかでしょう。
また、書き込みをした人物が特定されない可能性も低いです。発信者開示がされてしまうので、どこから書き込んだか明らかになることがほとんどです。
4 ネット犯罪の弁護
(1)示談
ネット犯罪の多くは被害者のいる犯罪です。
被害者がいる犯罪の場合は、示談をすることが第一となります。
示談は契約です。当然当事者同士で行うことができますが、加害者が直接被害者と交渉しても、被害者側から拒絶されることも多くありますし、また被害者側から過大な請求を受けてしまう場合があります。
弁護士が直接被害者と交渉することで、適切な示談交渉を行うことが可能になります。
(2)不起訴処分を目指す
弁護士は、検察官に対して不起訴処分になるよう働きかける活動を行います。
示談もそうですが、本人の反省状況、家族の監督状況などを適切に書面化し、検察官に交渉することが可能です。
(3)身柄解放活動
逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。
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