宮城県での業務上失火で逮捕
業務上失火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
宮城県白石市で飲食店を営むAさん。
厨房の火の始末が甘かったこともあり、火事を起こしてしまいました。
Aさんの店舗が全焼したほか、隣の住居にも延焼させ、住人を死亡させてしまいました。
Aさんは業務上失火などの容疑で白石警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)
~業務上失火罪とは~
Aさんは経営する飲食店の厨房で火事を起こしてしまいました。
業務上失火罪が成立することになるでしょう。
刑法第116条1項
失火により、第百八条に規定する物(※筆者注・住居または現に人がいる建造物等)又は他人の所有に係る第百九条に規定する物(※筆者注・住居以外かつ現に人がいない建造物等)を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
第117条の2
第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。
上記筆者注の「住居または現に人がいる建造物等」を「現住建造物等」、「住居以外かつ現に人がいない建造物等」を「非現住建造物等」と言います。
これらの条文をまとめると、
①業務とは関係なく、重第な過失もなく火事を起こし、現住建造物等または他人所有の非現住建造物等を焼損した場合
→116条1項の失火罪
②業務とは関係ないが、重大な過失で火事を起こし、現住建造物等または他人所有の非現住建造物等を焼損した場合
→117条の2の重過失失火罪
③業務と関係して火事を起こし、現住建造物等または他人所有の非現住建造物等を焼損した場合
→117条の2の業務上失火罪
が成立することになります。
②の、重大な過失で火事を起こしたというのは、色々な学説がありますが、例えばわずかに注意すれば火事の発生を予想・防止できたのに、火事を起こしてしまったような場合をいいます。
③の「業務」とは、職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位のことをいいます。
業務として火を扱っている場合には、しっかりとした火の管理を求められることになります。
したがって②と③は、①の失火罪よりも重い刑罰が定められているというわけです。
Aさんの場合、経営する飲食店の厨房の火の不始末で火事を起こし、現住建造物等であるジ隣の住居を焼損させていますので、③117条の2の業務上失火罪が成立する可能性が高いということになります。
~業務上過失致死罪も~
今回の事例では、隣の住居の住人を死亡させてしまったので、業務上過失致死罪も成立するでしょう。
第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
今回の業務上失火罪と業務上過失致死罪は1つの火の不始末という行為によって生じています。
このように、1つの行為により複数の犯罪が成立する場合、最も重い罰則が定められた罪を基準に刑罰が決まります(観念的競合といいます)。
第54条1項
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
本事例では、業務上失火罪よりも重い刑罰が定められた業務上過失致死罪の法定刑(五年以下の懲役もしくは禁錮または百万円以下の罰金)の範囲内で、刑罰が決まることになります。
~弁護士にご相談を~
逮捕されたAさんの今後の刑事手続きの流れについては、こちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/
弁護士としては、勾留を防いで早期に釈放されるよう、あるいは懲役や禁錮の実刑判決を避け、罰金や執行猶予などの結果に終わるよう弁護活動をしてまいります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合は、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。
業務上失火罪や業務上過失致死罪などで逮捕された、取調べのために警察に呼び出されたといった場合には、ぜひご相談ください。