万引きで常習累犯窃盗

万引き常習累犯窃盗となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~事例~

Aさんは、令和2年6月19日に、宮城県名取市のスーパーマーケット店内において、食料品5点を万引きしました。
Aさんには前科があり、窃盗の前科2つは、夜間に他人宅に工具を使用して忍び込み、現金を窃取するもので、1つはコンビニエンスストア内の万引きです。
Aさんは、店の通報を受けて駆け付けた宮城県岩沼警察署の警察官に、窃盗の容疑で逮捕されました。
しかし、その後の取調べでは、常習累犯窃盗に当たると取調官から言われ、厳しい処分が科されるのではないかと不安です。
(フィクションです。)

常習累犯窃盗とは

窃盗事件を起こした者を窃盗犯として検挙したが、その者が多数の類似の窃盗の前科があることが判明すると、窃盗罪ではなく、常習累犯窃盗罪が成立する可能性が出てきます。

常習累犯窃盗とは、窃盗罪や窃盗未遂罪にあたる行為を常習的に行う犯罪で、昭和5年施行の「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」(以下、「盗犯等防止法」といいます。)に規定されています。

第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

とても古い法律ですので、なかなか読み辛いですね。

常習累犯窃盗は、常習として、窃盗罪、強盗罪、強盗利得罪、事後強盗罪、こん睡強盗罪、またはこれらの未遂罪を犯した者で、その行為の前の10年以内にそれらの罪またはこれらの罪と他の罪との併合罪で3回以上6月以上の懲役刑の執行を受けた、もしくはその執行を免除された場合に成立する罪です。

◇形式的要件◇

常習累犯窃盗の形式的要件は、「行為前の10年以内に、窃盗、窃盗未遂などについて、懲役6月以上の刑の執行を受けるなどしたことが3回以上あること」です。

「行為前の10年以内」というのは、窃取行為などが開始される前の10年以内という意味です。
Aさんは、令和2年6月19日にスーパーマーケット店内で万引きをしましたので、行為開始日は令和2年6月19日となり、「行為前の10年以内」は、平成22年6月19日以後ということになります。

「窃盗、窃盗未遂など」について、前科の内容として、幇助犯や教唆犯も含まれます。
また、窃盗、強盗、事後強盗、こん睡強盗の他に、常習累犯窃盗、強盗致死傷も含まれます。

「刑の執行を受け」たとは、10年以内の3回の刑のうち最初の刑の執行終了日が10年以内であれば足ります。
留意すべきは、懲役刑の執行猶予判決を受け、執行猶予期間を経過した場合や執行猶予期間中である場合には、刑の執行を受けたことにならず、執行の免除を受けたことにもならない点です。

◇実質的要件◇

常習累犯窃盗の実質的要件として、「常習として犯した」ことが必要です。
「常習として犯した」というのは、反復して窃盗罪などを犯す習癖を有するということです。
この要件については、行為者の前科前歴の内容、動機、手口や態様、犯行回数、性格などを総合的に考慮して判断されます。

常習累犯窃盗の実質的要件を満たしているかどうかを判断するにあたっては、前科の内容と本件犯行との間に手口や態様が類似している場合には、容易に常習性が肯定することができます。
しかし、手口や態様に類似性がない場合であっても、動機、犯行回数、犯行に及ぶ生活状況などを考慮し、窃盗の習癖に基づく犯行と認められれば、常習性が肯定されることになります。

Aさんの前科の内容について、2つは現金の侵入盗であるのに対して、本件犯行は店舗内での食料品の万引きです。
一見、その手口や態様において異なるように思えますが、容易に窃盗に及ぶ動機などが認められれば、本件犯行は窃盗を犯す習癖に基づくものと言えます。
また、Aさんには、コンビニエンスストアでの万引きの前科もあり、手口や様態も全く異なるものとは言えず、本件犯行が窃盗を犯す習癖に基づくものと認められるでしょう。

常習累犯窃盗の法定刑は、3年以上の有期懲役となっており、窃盗の法定刑よりも重くなっています。
常習性を否定する事情や被告人に有利な事情を収集し、出来る限り寛大な判決となるよう弁護活動する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が窃盗や常習累犯窃盗に問われお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
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