検察官送致について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~事例~
宮城県登米警察署は、宮城県登米市で起きた強盗致傷事件の容疑者として、少年Aくん(18歳)とBくん(18歳)を逮捕しました。
Aくんの母親は、警察からAくんについて事情を聴かれた際、悪ければ検察官送致もあり得ると言われ、対応に困っています。
(フィクションです。)
少年事件における終局決定
捜査機関は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があると判断する場合、及び、犯罪の嫌疑はないが、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると判断する場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致します。
事件を受理した家庭裁判所は、当該少年の保護事件について少年審判を開始するか否かを判断します。
少年審判を開始するのが相当であると認めるときは、家庭裁判所は審判開始決定をしなければなりません。
その後、調査官による調査を経て、少年審判が開かれ、審理を終えると、少年に対して決定が言い渡されます。
家庭裁判所が行う決定には、「終局決定」と「中間決定」の2種類あります。
「終局決定」は、少年の最終的な処分を決める決定であり、「中間決定」は、終局決定前の中間的な措置としてなされる決定です。
「終局決定」には、①審判不開始、②不処分、③保護処分、④検察官送致、⑤都道府県知事または児童相談所長送致の5種類あります。
検察官送致
終局決定の1つである「検察官送致」とは、(1)調査あるいは審判の結果、少年が20歳以上であることが判明したとき、及び、(2)死刑、懲役または禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質および情状に照らして刑事処分相当と認めるときは、家庭裁判所は事件を検察官に送致する決定をしなければなりません。
(1)年齢超過を理由とする検察官送致
審判時に少年が20歳以上に達している場合、少年法の適用対象ではなくなるため、家庭裁判所は審判をすることも、保護処分をすることもできなくなります。
そのため、このような場合には、家庭裁判所は検察官送致の決定をしなければなりません。
(2)刑事処分相当を理由とする検察官送致
家庭裁判所は、「死刑、懲役又は禁固に当たる罪」を犯した少年について、「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」は、検察官送致することができます。
また、行為時16歳以上の少年で、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に当たる事件の場合には、検察官送致の決定をしなければなりません。
ただし、そのような原則検察官送致となる事件であっても、「犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」は検察官送致以外の処分をすることができます。
検察官送致となれば、刑事手続に移行し、起訴された場合には公判審理を経て判決により刑罰が科される可能性があります。
判決までの間、保釈制度を利用して釈放されることはありますが、拘置所に勾留されることも多く、長期間に及ぶ身体拘束を強いられる場合もあります。
また、公判は公開審理であるため、少年のプライバシーが侵害されるおそれもあります。
公判の結果、少年に実刑が科された場合、少年は少年刑務所に収容されることになります。
少年刑務所は、刑罰を執行する行刑施設であり、矯正教育施設である少年院とは目的が異なるため、少年刑務所で行われる教育的処遇は不十分だと言われています。
少年が事件を起こした背景には様々な要因が複雑に絡み合っていることが多く、どのような処分が少年の更生に適するかをしっかりと検討していく必要があります。
少年の更生の支援者として、弁護人・付添人である弁護士の役割は大きいと言えるでしょう。
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