警察官が取調べ中に暴行
警察官が少年を取調べ中に暴行し、有罪判決を受けた事件がありました。
捜査中に少年殴る暴行 和歌山県警の元巡査に執行猶予付き有罪判決
Yahoo!ニュース(ABCテレビ提供)
特別公務員暴行陵虐罪という罪に問われたこの事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~特別公務員暴行陵虐罪とは~
この事件は、器物損壊事件で中学1年生の少年を取り調べていた警察官が、少年を何度も殴ったというものです。
幸い少年にケガはありませんでした。
少年は事件現場にいたものの、器物損壊行為には加わっていなかったようです。
裁判所は暴行をした元警察官に対し、懲役1年6ヵ月・執行猶予3年を言い渡しました。
今回問題となった特別公務員暴行陵虐罪という犯罪は、あまり聞きなじみがないと思います。
条文を見てみましょう。
刑法195条1項
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。
この犯罪は、条文記載の仕事をしている人が、犯罪をしたと疑われている被疑者や刑事裁判にかけられている被告人などに対し、暴行や陵辱(わいせつ行為などの恥ずかしめる行為)、加虐(暴行以外の方法で肉体的に苦痛を与える行為)をした場合に成立することになります。
定められた刑罰(法定刑)は7年以下の懲役または禁錮です。
通常の暴行罪が2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料なので、だいぶ重くなっています。
警察官などによる暴行等は、近年は少なくなったとはいえ、たびたび行われていたことであり、ウソの自白の強要など冤罪事件につながる可能性もあるので、重く罰することとされています。
※ 禁錮は、刑務作業をするかは自由であること以外は懲役と同じ刑罰です。
拘留は、1日以上30日未満の期間、刑事施設に収容される刑罰です。
罰金は1万円以上を、科料は1000円以上1万円未満を徴収される刑罰です。
なお、暴行によりケガをさせた場合は15年以下の懲役または禁錮となります。
通常の傷害罪と比べると、罰金刑で済む可能性がなくなるという違いがあります。
~判決理由は?~
報道によると、和歌山地裁は判決理由として、「中学1年生に対する事情聴取の方法としては不適切極まりなく、厳しく非難されなければならない」と指摘しています。
「中学1年生に対する事情聴取の方法としては不適切」という部分に対しては、相手が大人であっても不適切では?と突っ込みたくなりますが、いずれにしろ、許されないことなのだという指摘はなされているといえます。
一方、示談が成立していることなどが、被告人にとって有利な事情をしてあげられています。
たしかに、被害者に謝罪・賠償して示談が成立していれば、していない場合よりも悪質さは減るので、判決が軽くなる事情となりえます。
特別公務員暴行陵虐罪に限らず、被害者のいる犯罪で少しでも軽い結果を目指すためには、示談を結ぶことが重要となってきます。
~弁護士にご相談ください~
しかし示談を結ぼうにも、何と言ってお願いしたらよいのか、示談金はいくらにしたらよいのか、示談書の文言はどうしたらよいのかなど、わからないことが多いと思います。
あなたやご家族が犯罪をしてお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
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