警察官が犯人隠避罪で書類送検

警察官が犯人隠避罪で書類送検

秋田県警の警察官らが、警察署職員の犯罪を隠ぺいし、犯人隠避罪(ハンニンインピザイ)で書類送検された事件がありました。

車検切れの車運転隠蔽 秋田県警警部ら4人、犯人隠避容疑で書類送検
毎日新聞

この事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~犯人隠避罪とは~

この事件の発端は、秋田県警の職員が、自家用車の車検が切れていることを出先で気が付きましたが、そのまま運転して帰宅したことでした。
車検が切れていることを知りながら乗り続けることは道路運送車両法に違反する犯罪であり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(同法108条1号・58条1項参照)。

しかし、車検切れと知らなければ処罰の対象外となっています。
そこで、運転した職員からの自主的な報告を受けた警察官らは、業務が増えることを避けるといった理由で、車検切れを知った後は乗っていないというウソの供述調書を作成するなどして、犯罪をもみ消してしまったのです。

しかし、この犯罪をもみ消した行為が別の警察官に発覚し、犯人隠避罪が成立するとして捜査を受けることとなったのです。
犯人隠避罪の条文を見てみましょう。

刑法103条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

「蔵匿」とは、場所を提供してかくまうことを言います。
「隠避」とは、蔵匿以外の方法により、捜査機関による逮捕や発見を妨げる行為を言います。

今回は、ウソの調書の作成という方法を用いているので、「隠避」に当たるということになります。

罰則は3年以下の懲役または30万円以下の罰金ですから、車検切れに気付きながら運転してしまった職員よりも重い罪に問われていることになります。

~虚偽公文書作成罪の可能性も~

また、虚偽の内容の供述調書を作成したことには、虚偽公文書作成罪も成立する可能性があります。

刑法156条
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

今回の事件の場合、「公務員」である警察官が、取調べをしてその内容を書面に残すという「職務に関し」、内容が正しい書面として他の警察官らに見せるといった「行使の目的で」、車検切れを認識した時点以降は運転していないという内容の「虚偽の文書…を作成」したものとして、虚偽公文書作成罪が成立する可能性もあるわけです。

罰則については、「印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による」とあります。
供述調書には、作成した警察官の署名・押印がなされるので、署名・押印がなされた公文書の偽造に関する155条1項と同じく、1年以上10年以下の懲役ということになります。
押印や署名がある文書の方が正式な内容・手続きで作られた文書であると認識されやすく、それが虚偽だった場合の影響がより大きいということで、押印や署名がない文書の場合より重く処罰されることになっています。

~今後の刑事手続は?~

今回のニュース記事は、警察官らが書類送検されたというものです。

犯罪が起こると、①最初に警察官が捜査し、②次に検察官が捜査し、③その後に裁判が始まるというのが基本的な流れです。
書類送検というのは、比較的軽い事件で被疑者が逮捕されていない事件について、①で作られた捜査書類が、②のために検察官に送付されることを言います。

※ 逮捕されている事件について、身柄と捜査書類が両方送られることは単に「送検」と呼ばれます。

したがって今回関与した警察官らは今後、②検察官の取調べを受け、不起訴処分とならない限り、③裁判を受けるという形になるでしょう。
ただ、罰金刑で済ますのであれば、簡易な手続で罰金刑にする略式裁判の手続が採られ、公開の法廷での刑事裁判は開かれない可能性もあります。

~弁護士にご相談を~

あなたやご家族が、犯人隠避罪や虚偽公文書作成罪など何らかの犯罪で捜査を受けた、逮捕されたといった場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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