覚せい剤を無理やり打たれて無罪?

覚せい剤を無理やり打たれて無罪?

覚せい剤を使用した罪に問われるも、無罪判決が出された事件がありました。

「無理やり注射された可能性」 覚醒剤使用男性に無罪判決 佐賀地裁
Yahoo!ニュース(佐賀新聞)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~尿検査で検出されるも無罪に~

この事件では、佐賀県内や福岡県内で覚せい剤を使用したとして男性が逮捕されました。
男性は尿検査で覚せい剤の成分が検出されていました。

しかし男性は逮捕時から、「知人から覚醒剤を強制的に注射された」といった供述をして容疑を否認しました。
覚せい剤使用の罪は、自分の意思で摂取しなければ成立しないからです。

そして佐賀地方裁判所は、「自らの意思で使用したことについて合理的な疑いが残る」として無罪判決を出しました。

多くの方は、「そんなことあるか?」と思われるかもしれません。
弊所も詳しい事情は分かりませんが、男性の供述が嘘とは言い切れない事情があったのだろうと思われます。

~有罪とする条件は?~

そもそも刑事裁判では、裁判にかけられている人(被告人)が、本当に犯罪をしたと言うには合理的な疑いが残る場合には有罪判決をすることができません。

「合理的な疑いが残る」というのを具体的な数値に表すのは難しいですが、たとえば99%以上、ほぼ間違いなくやっていると判断された場合には、合理的な疑いは残っていないとして有罪となるでしょう。
仮に被告人が、「私が寝ている間に、小学生の子供が勝手に私に覚せい剤を注射した」という主張をした場合、理論上はその可能性はゼロではないと思いますが、極めて可能性が低い弁解と言えるので、有罪にできるでしょう。

一方、犯罪をしている確率が90%、80%、70%…と下がってくると、有罪にはしづらくなってきます。
無実の罪で処罰を受けるという冤罪を防ぐために、犯罪をしていない可能性もある程度ある場合には、有罪とできないのです。
「無罪推定の原則」や「疑わしきは被告人の利益に」といった言葉で現されます。

今回の事件でいうと、たしかに知人から無理やり注射を打たれたという主張は、一般的な感覚からすると信じられないかもしれません。
しかし被告人と知人の関係性や当時の状況などから考えると不合理な弁解とは言い切れず、自らの意思で覚せい剤を摂取していない可能性も否定しきれないと判断されたのでしょう。
そこで無罪判決が出されたわけです。

~犯罪を証明するのは検察官~

このように考えると、被告人は無実である証明まではする必要がなく、逆に検察官が、犯罪をしたという証明をしなければならないことになります。

つまり、被告人としては、犯罪をしていないと言える可能性もある程度あると言える理由さえ示せれば無罪となるので、犯罪をしていないという証明までする必要はないのです。

一方、検察官としては、ほぼ間違いなく被告人が犯罪をしたと言う理由を示さなければ、有罪判決を得ることができないわけですから、検察官が証明責任を負っているということになるのです。

被告人にとって有利に思われるかもしれませんが、犯罪をしていないことを証明するのは「悪魔の証明」と言われる困難なものであり、それを要求すると、冤罪が生まれやすくなってしまうのです。

先日、国外逃亡したカルロス・ゴーン被告について森法務大臣が、「潔白というのならば、司法の場で正々堂々と無罪を証明すべき」と発言して、後日、発言を「無罪を主張すべき」に訂正したということがありました。
被告人のカルロス・ゴーンさんは無罪の証明をする必要はないのですから、おかしな発言だとして国内外から批判されたわけです。

~お困りの方は弁護士にご相談を~

身に覚えのない犯罪を疑われて困っている場合には、無罪判決に向けて弁護活動を致しますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
また、本当に犯行をしており無罪獲得が不可能なケースでも、早期釈放や軽い判決に向けて活動を致しますので、ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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