児童買春から児童ポルノ製造・公然陳列の罪が発覚③
~前回からの流れ~
Aさんは、出会い系アプリで女子高校生Vさん(16歳)と知り合いました。
Vさんが「今年の春に高校2年生になった」と話していたため、Aさんは,Vさんの年齢を16歳か17歳だろうと思いましたが、Vさんと援助交際をしたいと考えて、Vさんに3万円を渡す代わりに性交することを約束しました。
当日、Vさんと会ったAさんは、渡すお金を1万円増額する代わりにVさんとの性交時の場面を動画撮影させてほしいとVさんに持ち掛けました。
Vさんの了承を得たAさんは、Vさんと性交に及ぶ様子をスマートフォンで動画撮影しました。
帰宅後、Aさんは、その動画をインターネット掲示板に公開しました。
Vさんが宮城県遠田警察署に補導されたことをきっかけに事件が発覚し、Aさんは児童買春の疑いで宮城県遠田警察署に逮捕され、スマートフォンを押収されました。
捜査の結果、Aさんは、20日間の勾留後、児童ポルノ製造の罪と児童ポルノ公然陳列の罪で再逮捕されました。
(フィクションです。)
前回のコラムの通り、児童ポルノの製造の罪については,法律では,その目的や態様によって適用される条文や罰則が異なります。
今回のコラムでは、児童ポルノ製造の罪の種類の解説と、児童ポルノ公然陳列の罪の解説をします。
~児童ポルノ製造の罪の種類~
②単純な製造(法律7条4項)
①や④のようにはっきりとした目的がなく、自分のために児童ポルノを製造する場合です。
児童の同意の有無は関係ありません。
例えば、児童本人に児童ポルノに該当する写真を自撮りさせて、そのデータを譲り受けた場合でも、製造罪が成立する場合があります。
警察庁の統計データによると、平成30年上半期の児童ポルノ製造被害にあった児童の被害態様別割合では、児童が自らを撮影した自撮り画像に伴う被害が約4割を占めています。
③盗撮による製造(法律7条5項)
ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真等で撮影して児童ポルノを製造する行為です。
具体例としては、児童が利用する更衣室に隠しカメラを設置して盗撮する行為が挙げられます。
児童ポルノの盗撮であることから、各都道府県の迷惑防止条例で禁止されている盗撮の罰則規定よりも重い罰則規定となっています。
①提供する目的での製造(法律7条3項)
「提供」とは,児童ポルノであるDVD等を相手方において利用すべき状態におく法律上・事実上の一切の行為をいい,有償・無償は問いません。
児童ポルノに該当するDVDを販売する行為や,画像データを送信する行為が「提供」に該当します。
提供することを目的として児童ポルノを製造すると「提供する目的での製造」にあたります。
④不特定若しくは多数へ提供や公然陳列する目的での製造(法律7条7項)
不特定多数もしくは多数への提供や公然陳列する目的での製造が該当します。
「公然」とは,不特定又は多数の人が認識することのできる状態のことをいい,現実に認識される必要はなく,認識される可能性があれば足ります。
「陳列」とは,人がその内容を認識できる状態に置くことをいいます。
つまり、児童ポルノの公然陳列とは,児童ポルノを不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいいます。
公然陳列となる場合の例としては,SNSやインターネット掲示板、ファイル共有ソフトなどに児童ポルノをアップロードして、インターネットを介して不特定多数の者が閲覧できるような状態にすることなどがあります。
インターネットの掲示板やSNSは、一般的に、不特定多数の人が閲覧可能であるため、利用する不特定多数の人がその児童ポルノを見ることができる状態となってしまいます。
そのような状態に児童ポルノを置くことは、児童ポルノを「公然と陳列」したと判断される可能性が高いです。
今回の事例のAさんは、Vさんとの性交時の場面を撮影した動画をインターネット掲示板に公開しています。
Aさんが、インターネットの掲示板に公開する目的で動画を撮影した場合は、不特定若しくは多数への児童ポルノの公然陳列目的の製造の罪が成立する可能性が高いです。
次回のコラムでは、児童ポルノ公然陳列の罪について解説します。
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(宮城県遠田警察署への初回接見費用:43,220円)