イッキ飲み死亡で警察捜査
宮城県仙台市に住む20歳の大学生Aさん。
友達と自宅で飲み会をしていました。
イッキ飲みのコールが起こるなど、大騒ぎの状態となりました。
Aさんが、あまり酒が強くないVさんにもイッキ飲みをさせたところ、そのうちVさんは横になり、声をかけても反応しない状態となりました。
Aさんら周りの友達は、救急車を呼ぶなどはせず放っておきました。
その後Vさんは嘔吐し、吐瀉物によって窒息死しました。
翌朝からAさんらは、逮捕こそされませんでしたが、警察から事情聴取をされました。
(フィクションです)
~保護責任者遺棄致死罪~
Vさんに一気飲みをさせ酔いつぶれた状態にさせ、なんの措置も採らずに放置し、死亡させてしまったAさんには、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があります。
刑法第218条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第219条
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
酔いつぶれたVさんは急性アルコール中毒といえる状態であったと考えられ、218条の「病者」に該当する可能性があります。
また、Aさんは酒に弱いVさんにイッキ飲みをさせたこと、自宅での飲み会なのでAさんらの他にVさんを助けられる人がいないことなどを考えると、Aさんは病者であるVさんを「保護する責任のある者」に該当する可能性があります。
そして、Aさんは救急車を呼ぶなどの「生存に必要な保護をしなかった」といえます。
その結果、Vさんが死亡しているので、219条の「前二条の罪を犯し、よって人を死」亡させた者に当たり、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があるわけです。
なお、罰則については「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」とあります。
これは、218条と傷害致死罪(205条)と比較し、上限も下限も重い方を選ぶということです。
傷害致死罪が3年以上の有期懲役(有期懲役の上限は20年)ですので、結局、上限も下限も傷害致死罪の方が重いので、保護責任者遺棄致死罪も傷害致死罪と同じく3年以上20年以下の懲役となります。
~傷害致死罪・傷害現場助勢罪・過失致死罪~
他にも、状況によっては様々な犯罪が成立する可能性があります。
Vさんに一気飲みさせて潰そうとしていたような場合には、傷害致死罪が成立する可能性があります。
第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
また、Vさんが一気飲みさせられそうになっているときに、周りからはやし立てた人には、傷害現場助勢罪が成立する可能性もあります。
第206条
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
酔わせて潰そうという意思がなくても、やりすぎて死なせてしまったとして、過失致死罪が成立する可能性もあります。
第210条
過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
~今後の刑事手続きの流れ~
Aさんらは、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けることになるでしょう。
その結果、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートします。
もし検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、前科も付きません。
また、簡易な手続で罰金刑に処する略式起訴を選択する場合もあります。
弁護士としては、不起訴処分や罰金処分、執行猶予などの軽い処分・判決を目指して弁護活動をしていくことになります。
なお、仮に逮捕されてしまった事件では、まずは最大で3日間、警察署等で身体拘束されます。
そしてもし検察官が逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が起訴・不起訴の判断をします。
弁護士としては、まずは検察官の勾留請求や裁判官の勾留許可を防ぎ、早期釈放を目指した上で、不起訴処分や罰金処分、執行猶予などの軽い処分・判決を目指していくことになります。
~弁護士にご相談を~
警察から取調べを受けると、ご本人やご家族は、逮捕されてしまうのか、どんな罪が成立するのか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか、等々、不安点が多いと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。
仮に逮捕されている場合には、ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。
保護責任者遺棄致死罪などで取調べを受けた、逮捕されたといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。