【事例解説】SNS上で誹謗中傷をして逮捕、実名を出さない場合でも名誉棄損罪となるケース
名誉棄損罪と親告罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
参考事件
宮城県仙台市に住んでいる大学生のAさんは、同じ大学のサークルに入っているVさんのことが嫌いでした。
AさんはVさんが不快と思う行動をする度にSNS上で、Vさんのイニシャルを用いて誹謗中傷を繰り返していました。
ある日、Vさんの友人がたまたまAさんのアカウントを見つけ、Vさんの悪口が投稿されていることに気付きました。
そしてVさんもAさんの投稿を知り、警察に相談することにしました。
その後Aさんの自宅に警察官がやって、Aさんを名誉毀損罪の疑いで仙台南警察署に逮捕しました。
(この参考事件はフィクションです。)

名誉毀損罪
刑法の「名誉に対する罪」が定められた第34章に、名誉棄損罪の記載があります。
刑法第230条第1項がその条文で、内容は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」となっています。
「名誉を毀損」するとは、人の社会的評価を低下させることを指しています。
この場合の「人」は個人だけではなく、法人やその他団体も含んでいます。
実際に評価が低下している必要まではなく、その可能性があるだけでも名誉棄損罪は成立します。
「事実を摘示」とあるため、名誉棄損罪が成立するためにはある程度具体的な内容がなければならず、個人的な評価などでは成立しません。
名誉棄損罪の成立には「公然性」も重要で、名誉の毀損は不特定又は多数人が認識できる状態で行われている必要があります。
そのため不特定多数の人が使う場であるSNSは、公然性が高い場所と言えます。
参考事件の場合、Aさんはイニシャルを使っており、Vさんの実名を伏せています。
しかしVさんの友人は、Vさんの誹謗中傷をしていると気付きました。
実名を伏せたとしても、断片的な情報から相手の特定が可能な場合は、名誉棄損罪が成立する可能性があります。
親告罪
刑法第34章の刑法第232条第1項には、「この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定められています。
これは親告罪の条文で、名誉棄損罪は公訴の提起に被害者の刑事告訴が必要となる犯罪になります。
そのため被害者と示談交渉を行い、刑事告訴をしない、または刑事告訴の取消しをする内容で示談を締結すれば、前科を回避することができます。
示談交渉は当事者同士でも行うことはできますが、弁護士がいればよりスムーズに示談交渉を進めることができます。
親告罪の事件で前科の回避を目指す場合は、法律事務所に相談し、弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めします。
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