虐待で逮捕
親が子供への虐待で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【事例】
宮城県村田町に住む男性Aさん。
妻の小学生の連れ子Vさんに対し、日常的に暴力を振るったり、満足に食事を与えなかったり、性的暴行を加えたりしていました。
Vさんの学校の先生が、Vさんが異常に痩せ細り、身体に傷があることに気が付いたことから、Vさんに事情を聞いたところ、上記のような虐待を受けていることが判明。
警察や児童相談所などに報告しました。
その後Aさんは、宮城県大河原警察署の警察官により逮捕されました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~虐待で成立する犯罪~
親による子供への虐待は、外部の人にとっては見つけることが難しい面があり、子供が泣き寝入りしてしまうことも多いでしょう。
そこで、児童虐待防止法や児童福祉法に基づき、虐待を発見した者は福祉事務所や児童相談所に伝える義務が全ての国民に課せられています。
この義務を果たさなくても罰則はありませんが、虐待が疑われる場合には、ためらわずに通告するのが望ましいといえます。
何らかのルートにより虐待が見つかった場合、必要であれば子供は児童相談所などで保護されることになりますが、親は犯罪者として警察から取調べを受けたり、逮捕される可能性があります。
虐待で成立する可能性がある犯罪としては以下のように、傷害罪や保護責任者遺棄罪、強制性交等罪や監護者性交等罪など様々なものが考えられます。
~傷害罪~
まずは傷害罪の条文を見てみましょう。
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
暴力により子供をケガさせれば、当然ながら傷害罪が成立することになるでしょう。
もちろん、子供が死亡すれば殺人罪や傷害致死罪が成立する可能性もあります。
第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
~保護責任者遺棄罪~
同居する親は子供の衣食住を確保しなければなりません。
この義務に違反して、食事を与えないなどのネグレクトをすると保護責任者遺棄罪が成立したり、子供が健康を害するに至ると保護責任者遺棄致傷罪が成立する可能性があります。
第218条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第219条
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
子供が死亡するに至れば保護責任者遺棄致死罪や殺人罪が成立する可能性もあります。
ちなみに保護責任者遺棄致傷罪は3か月以上15年以下の懲役、保護責任者遺棄致死罪は3年以上の有期懲役(余罪がなければ上限は20年)です。
~強制性交等罪・監護者性交等罪~
子供に13歳以上の者を暴行または脅迫を用いてレイプした場合、あるいは暴行・脅迫を用いなくても13歳未満の子供と性交した場合には、強制性交等罪が成立します。
第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
また、18歳未満の子供に対し、暴行・脅迫を用いなくても、親という強い立場を利用して抵抗を難しくし、性交をした場合には監護者性交等罪が成立する可能性もあります。
第179条2項
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
たとえば、「他の人に言ったら、家族がバラバラになっちゃうよ」「家にいられなくなっちゃうよ」などと言って心理的に抵抗を難しくし、性交したような場合にこの罪が成立する可能性があります。
177条の強制性交等罪と同様、5年以上の有期懲役(余罪がなければ上限は20年)となります。
性交に至らなくても、身体に触るなどのわいせつな行為をすれば強制わいせつ罪や監護者わいせつ罪などが成立する可能性もあります。
第176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第179条1項
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
~弁護士にご相談を~
このように、虐待をすると様々な犯罪が成立する可能性があります。
もしご家族や親族が虐待事件を起こし逮捕されたという場合には、警察や検察の取調べの末に刑事裁判が開かれ、有罪となれば刑罰を受けるという流れになることが予想されます。
どのような手続が進んでいくのか、どのくらいの刑罰を受けるのか、家族関係はどうなってしまうのかなど、不安なことが多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
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