電車内の強制わいせつで逮捕
電車内での強制わいせつ行為で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【参考ニュース】
「騒いだら殺す」列車内で高校生に強制わいせつ、容疑で埼玉県の25歳男を再逮捕 同時期に被害数件、余罪調べる
Yahoo!ニュース(佐賀新聞提供)
この事件は、佐賀県を走行中の電車内で、「騒いだら殺す」などと表示させたスマホを女子高生に示し、身体を触ったとして、強制わいせつの容疑で逮捕されたものです。
40分間に渡って触り続けたとの報道もあります。
痴漢をすると、一般的には、①各都道府県が制定する迷惑行為防止条例違反に問われる場合と、②刑法の強制わいせつ罪に問われる場合があります。
宮城県の条例と刑法の条文を見てみましょう。
宮城県・迷惑行為防止条例
第3条の2第1項
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
第1号
衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
刑法第176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
条例違反の罰則は、痴漢の非常習者が6か月以下の懲役または50万円以下の罰金、常習者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(17条1項1号・2項参照)。
一方、強制わいせつ罪は6か月以上10年以下の懲役なので、罰金で終わる可能性はありません。
このように強制わいせつ罪の方が刑罰が重いので、具体的な犯行方法を考慮し、悪質な犯行の場合に強制わいせつ罪、痴漢の中では悪質とまでは言えない場合には条例違反となる傾向にあります。
具体的な線引きは難しいですが、例えば、①スカートや下着の中に手を入れて触ったというような場合には強制わいせつ罪に、②服の上から触ったり、もともと出していた腕や足に触ったような場合には条例違反になる可能性が高まるでしょう。
今回のニュースの事件では、触っていた部位の他、「殺す」という強い言葉を用いたり、触っていた時間なども考慮して、強制わいせつの容疑で逮捕した可能性があります。
~脅迫罪と条例違反に問われる可能性も~
今回の事件で逮捕された被疑者は、同じような手口の余罪があり、すでに強制わいせつ罪の容疑で逮捕されていました。
しかし、この余罪については結局、脅迫罪と条例違反で裁判にかけられたとのことです。
脅迫罪の条文も見てみましょう。
刑法第222条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
脅迫罪も強制わいせつ罪も、脅迫を手段として用いた場合に成立しうる犯罪である点は同じです。
しかし、脅迫罪における脅迫は、人を畏怖させる(怖がらせる)程度の害悪を告げることを言います。
一方、強制わいせつ罪における脅迫は、人の反抗を著しく困難にさせる程度の害悪を告げることを言います。
つまり、強制わいせつ罪の方がより強い言葉で脅さなければ成立しないことになるのです。
今回の余罪の事件で、逮捕された被疑者が何と言って脅したのかは記事からはわかりません。
おそらく、強制わいせつ罪で逮捕したものの、脅迫の内容が被害者の反抗を著しく困難にする程度のものとまでは言いきれず、他に強制わいせつ罪が成立するような暴行があるとも言い切れず、有罪にできる保証がなかったため、強制わいせつ罪での起訴はしなかったのかもしれません。
とはいえ、佐賀県迷惑行為防止条例に定められた刑罰は宮城県の条例と同じで、これまで前科がなく非常習者とされれば最高でも6か月の懲役、常習者でも最高で1年の懲役となります。
そこで、相手が怖がる程度の脅迫はあったのだから、条例違反だけでなく、最高で2年の懲役となる脅迫罪も加えて起訴したものと思われます。
~弁護士にご連絡を~
痴漢をしたとして逮捕されたり、取調べを受けた場合、ご本人やご家族は、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、取調べにはどう対応していけばいいのか、謝罪・賠償や示談はどうやって行えばよいのかなど、わからないことが多いと思います。
ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。
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