入札談合等関与行為防止法違反・競売入札妨害事件
入札談合等関与行為防止法違反・競売入札妨害事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,宮城県道路事務所が発注した国道補修工事設計事務の指名競争入札で,非公開であった予定価格を,設計事務所を経営しているBさんに漏洩しました。
この情報を得てBさんの設計事務所は不正に落札しました。
この結果,Aさんは入札談合等関与行為防止法違反の罪と競売入札妨害罪の容疑で逮捕されました。
(2021年7月26日に北海道新聞に掲載された記事を参考に作成されたフィクションです。)
【入札談合等関与行為防止法とは】
入札談合等関与行為防止法は,正式な名称を「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」といいます。
入札談合とは,国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する事業者が事前に通謀して,受注する事業者や金額などを決めることをいいます。
この入札談合のうち,国・地方公共団体等の職員が関与するもののことを官製談合といいます。
【入札談合等関与行為防止法上の刑事罰とは】
入札談合等関与行為防止法8条(職員による入札等の妨害の罪)
職員が,その所属する国等が入札等により行う売買,貸借,請負その他の契約の締結に関し, その職務に反し,事業者その他の者に談合を唆すこと,事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により,当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは,5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。
入札談合等関与行為防止法では,職員が,職務に反し,事業者に予定価格に関する秘密を教示すること等により,入札等の公正を害すべき行為を行うことを,「職員による入札等の妨害の罪」として規定しています。
刑事事件例でも,Aさんの行為は,事業者に予定価格に関する秘密を教示することにより,入札等の公正を害すべき行為であるとして,入札談合等関与行為防止法違反の罪にあたる可能性があります。
【刑法上の刑事罰とは】
刑法96条の6第1項(競売入札妨害罪)
偽計又は威力を用いて,公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は,3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
刑法では,偽計又は威力を用いて,公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をすることを,競売入札妨害罪として規定しています。
競売入札妨害罪の「偽計」の具体例は,特定の入札予定者に予定価格を伝えることが挙げられます。
そのため,刑事事件例のAさんによる行為も,偽計によって,公の入札の公正を害する行為であるとして,競売入札妨害罪にあたる可能性があります。
【入札談合等関与行為防止法違反の罪と競売入札妨害罪の関係】
入札談合等関与防止法違反の罪は,公務員が入札等の妨害に関与した犯罪であるため,厳罰が科されていると考えられます。
これは,入札談合等関与防止法違反の罪の刑罰が「5年以下の懲役又は250万円以下の罰金」であるのに対し,競売入札妨害罪の刑罰が「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金」であることに表れています。
そして,入札談合等関与行為防止法違反の罪と競売入札妨害罪を犯したという場合,どちらの犯罪も成立こそしますが,刑を科する上では二つの犯罪のうち「最も重い刑」のみが科されることになります。
したがって,刑事事件例においても,入札談合等関与行為防止法違反の罪と競売入札妨害罪が成立し,「5年以下の懲役又は250万円以下の罰金」が科されることになるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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