バスの無賃乗車で取調べ
バスの無賃乗車を繰り返し、警察の取調べを受ける場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【事例】
宮城県仙台市に住むAさん。
バスに乗車した際、運転手に対し、
「財布を忘れてしまって…」
などとウソをつき、
「今度ちゃんと払ってくださいね」
などと言ってもらって、料金の支払いを免れる行為を繰り返していました。
同じ運転手に対し同じ手を使ったことから怪しまれるようになり、バス会社の中で情報共有がなされるように。
再びAさんが同じ手口を使おうとしたとき、運転手が気が付き、
「いつも払ってないよね?身分証見せてもらえる?」
と言いました。
「ついに見つかったか」
と観念したAさん。
素直に身分証を提示し、その日はバスを降ろされました。
後日、相談を受けた仙台中央警察署からAさんに電話があり、取調べのために警察署に来るよう言われました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~詐欺罪が成立~
バスで運転手をだまし、無賃乗車を繰り返していたAさん。
詐欺罪が成立することになるでしょう。
条文を見てみます。
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第2項
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
第1項が、物をだまし取った場合の規定で、第2項が人をだまして財産上の利益を得た場合の規定です。
今回は物をだまし取ったのではなく、運転手をだまして乗車料金を免れるという財産上不法の利益を得たパターンなので、2項が成立することになります。
罰則は10年以下の懲役なので、条文上は長期間の懲役の可能性もある立派な犯罪になってしまうわけです。
~今後の展開は?~
今回のように逮捕されずに捜査が進められる事件を在宅事件と言います。
在宅事件では、警察からの呼び出しに応じて警察署に出向き、取調べや現場検証などの捜査を受けます。
一通りの捜査が終わると、捜査書類が警察から検察に送られます(書類送検)。
書類送検を受けた検察官は、さらに取調べなどの捜査をした上で、その犯罪をしたと疑われている被疑者を、刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。
このうち起訴には①正式起訴と②略式起訴があります。
①正式起訴されると刑事裁判が開かれ、事件によって懲役刑の実刑判決や執行猶予判決、罰金刑の判決を受けたり、まれに無罪判決がなされることになります。
一方、②略式起訴は比較的軽い事件でなされることが多いです。
法廷での刑事裁判は開かれず、簡単な手続で罰金を納付して終わるということになります。
さらに、より軽い事件などでは検察官が不起訴処分として、前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。
~軽い結果を目指すには~
前述のように、条文上は長期間の懲役もありえます。
しかし、特殊詐欺などに比べると今回のような無賃乗車は被害金額も少ないでしょうし、前科の有無などにもよりますが、不起訴処分や略式起訴で罰金に終わる可能性も十分考えられます。
ただ、軽い結果を目指すうえでは、バス会社に謝罪・弁償して示談することも重要となってきます。
示談を締結できたか否かによって結果が変わってくることも多くあります。
しかしご自身やご家族では、相手に何と言って示談をお願いすればいいのか、示談金額をいくらにしたらよいのか、示談書の文言はどうしたらよいのかなど、わからないことも多いと思います。
また、警察の取調べではどんなことを聞かれるのかなど、不安も強いと思います。
そこでぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
無料法律相談を行っておりますので、ぜひご利用ください。
なお、すでに逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスをご利用ください。